無伴奏[シャコンヌ]

芸術の本当の意味を追及するため、地下鉄の構内に身を置き演奏活動をするヴァイオリニストの姿を描く作品

フランスのリヨン。ヴァイオリニストのアルマン(リシャール・ベリ)は、10年前にソリストの代役としてデビューを飾り、以後、第一線で活躍してきたが、芸術家としての自分に疑問を感じ、また同じヴァイオリニストの親友が自殺したことをきっかけに舞台から退いた。彼はメトロの地下道を次なるコンサートホールに選び、自分の欲求のまま演奏し続ける。彼の脳裏に去来するオペラ歌手だった昔の恋人との思い出……。始めは誰の関心も惹かなかったが、やがて通行人の足を止めるようになる。音楽好きのメトロ職員ダロー(ジョン・ドブラニン)との出会い、アルマンの昔の姿を知る音楽家シャルル(フランソワ・ベルレアン)との再会、そして心を閉ざしがちだった切符売りのリディア(イネス・ディ・メディロス)も、アルマンの奏でる音色によって癒されていく。ある日、メトロで停電が起きる。動揺する通行人たちを優しくつつみこむアルマンの演奏。明かりがついた時、アルマンとリディアは自分たちの心が愛情で結ばれていることを知る。翌日アルマンは初めてチェロ奏者と共演、周囲の人々も演奏に参加し音楽の饗宴となったが、リディアはその輪の中に入っていくことができない。しばらくしてメトロで工事が始まる。アルマンは居場所を失い、立ち退きを要求してきた警官にヴァイオリンを叩き壊されてしまった。リディアが仕事を辞め自分のもとから去ったことも知り、悲嘆に暮れる。そんなアルマンの様子を遠くから眺めていたシャルルは、彼に自分のヴァイオリンを差し出す。アルマンに残された道はひとつ、ヴァイオリンを弾き続けることだけしかない。彼はメトロに生きるすべての人々のためバッハの『シャコンヌ』を奏で続ける。人生の喜び、普遍的な愛、そして自分が求めてきた芸術の真の姿をアルマンは遂に見い出すのだった。


映画情報

邦題:無伴奏[シャコンヌ]
原題:Le joueur de violon

監督:シャルリー・ヴァン・ダム
出演:リシャール・ベリー、イネス・ド・メデイロス、フランソワ・ベルレアン、ジーノ・レクナー

1994年/94分/フランス・ベルギー・ドイツ
配給:コムストック
1995年6月17日公開
フランス映画祭公開タイトル:ヴァイオリン弾き