2021年11月12日(金)、別所哲也さんが代表を務める米国アカデミー賞公認国際短編映画祭「ショートショート フィルムフェスティバル&アジア(SSFF & ASIA)」と「フランス映画祭2021 横浜」のコラボレーションによる「特別マスタークラス」を開催しました。

日仏合作を経験した監督2名をゲストにお迎えして、フランスとの合作やショートフィルムの魅力についてお話しを伺いました!
ペドロ・コランツ監督はスペインから、平井敦士監督はフランスからご参加いただきました。

以下よりアーカイブ配信をご視聴いただけます!

【テーマ】
ショートフィルム制作におけるフランスとの合作、フランス映画の魅力について

【トークゲスト】
ペドロ・コランツ(『あと さん ねん』監督)
平井敦士(『フレネルの光』監督)

【モデレーター】
東野正剛( SSFF & ASIA シニアフェスティバルディレクター )

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まず、作品の作られた背景について、平井監督は、かねてから地元である富山で映画を撮影したいという想いがあり、2012年にフランスに来て以来、故郷の変化を目の当たりにし、ストーリーの着想を得たという。コランツ監督は、実際に彼が神戸で遭遇した、見知らぬ日本人男性に駅で親切にされ、「君は僕の初めてのスペイン人の友人だから、住所を教えてくれ。」と言われたエピソードから、「もし本当に彼がスペインまで訪ねてきたら何が起こっただろう?」と想像し、ストーリーをつむぎ始めたというエピソードを紹介。

海外との合作において苦労した点については、平井監督のチームはほとんど日本人だったが、撮影監督はフランス人を起用。英語がわからない平井監督にとって、撮影現場では日本語・英語・フランス語が飛び交い、多言語での思考の切り替えに苦労したと回想。一方、コランツ監督は、すでに9年海外での生活をしており、ノルウェー、中国、日本などで短編制作をした経験があったため、インターナショナルな制作現場は慣れていたという。『あと さん ねん』はまさに、共通言語を持たない二人が出会ったら、という設定のため、海外との合作を体現している現場だったと語る。

また、キャスティングについての質問に関しては、2人の対照的な返答も印象的。『フレネルの光』では、主演以外は彼自身の実際の家族が出演しており、一人もプロの役者を起用していないという。その理由は、自身の故郷や家族がテーマなので、本人たち以上の役者はいないと考えたからだという。彼らからは、演技の仕方を知らないからこそ出る雰囲気や表情が印象的だったと語る。
一方、コランツ監督は、キャラクター設定と脚本をかなり練り上げていたので、最初からプロの俳優と仕事をしたいと考えていたという。日本人男性役を探すのには苦労したが、深田晃司監督の『歓待』に出演していた山内健司さんの演技に魅了され、声をかけたところ、快諾を得たという。撮影でフランス入りする頃には、山内さんは衣装や小道具などを全て自前で揃える程、完全にキャラクターの博になりきって撮影入りされたというエピソードも紹介。

モデレーターの東野さんからは、「”日仏合作”の2作品でありながら、わかりやすいフランスの要素(フランス人俳優やロケーション等)が映画の中に出てこないにも関わらず、どこか両作品の中にフランスのDNAが垣間見れるということが、フランスの世界最高峰の映画のレベルの高さを感じた」と感想を述べた。

セミナーの最後には、両監督が影響を受けたフランス映画・フランス映画人を伺ったところ、平井監督は、『泳ぎすぎた夜』(ダミアン・マニヴェル、五十嵐耕平監督)で助監督を務めたこともあり、ダミアン・マニヴェル監督には様々なことを学んだと語る。そして、コランツ監督は、今年のヴェネチア国際映画祭で最高賞である金獅子賞を受賞したオードレイ・ディヴァン監督の「Happening(原題)」が素晴らしかった、と述べた。

オンライン開催にも関わらず、多くの学生が参加し、大盛況のうちにマスタークラスを終えました。