今年は「フランス映画祭2020 横浜」公式YouTubeにて生配信が行われた特別マスタークラス。日本でショートフィルムの魅力を啓蒙し続ける「ショートショート フィルムフェスティバル&アジア(SSFF & ASIA)」とのコラボレーションで実現しました。


現在BSSTO(ブリリア ショートショート シアター オンライン)特設サイトで配信中のフランス発の短編映画『真西へ』からアリス・ドゥアール監督と『アデュー』からマティルド・プロフィ監督がフランス現地からオンラインで参加し、SSFF & ASIAフェスティバルディレクターの東野氏による進行でクロストークが展開。「フランスのショートフィルムでみる親と思春期の子の関係」をテーマに、父と娘の関係を描いたそれぞれの作品の制作背景や制作プロセスについてお答えいただきました。

ショートフィルムの制作で最も大切なことについて問われると、ドゥアール監督は俳優の演技は短編映画において決定的なものと話し、演出やチーム全体の調和など色々な要素があるものの、特に若い監督が技術的なことに挑戦しようとする上で俳優の演技をつぶしてしまうのではなく、引き立つように見せることの重要性について話されました。プロフィ監督にとっても俳優の存在は作品の要だそうで、映画を観終わったときに最も印象に残る俳優の顔や人物が映画に生命をもたらしてくれるものと、ドゥアール監督の発言に共感。フランスでの父親と娘の関係については、時代によって「父親」という存在の位置づけは変化していて、現代の父親の方が母親と同じように子どもの世話をする印象があると話すドゥアール監督に、プロフィ監督は父親像を一般化できないと前置きしつつも、思春期の子どもに向き合って話をする父親や存在感のある父親など、映画でよく描かれる父親像に対して『真西へ』に見られる父親のように、これまで映画で扱われてこなかったタイプの父親像もあるのではないかと話し、父親の描き方や父と娘の関係性の描かれ方についても様々な興味深い意見が出ました。「思春期の親子関係という難しい設定で作品をつくるにあたって気をつけたことは?」と学生からの質問に対しては、状況を一つはっきりと決めて物語を展開していく中で、その周辺に物語と直接関係ない映像をつけていく方法をとるとドゥアール監督。

一方でプロフィ監督は、物語に具体性を入れて描くこと、そして二人の人物が登場するときに、どちらかの視点から見るのではなく、常に視点は二人の人物の真ん中にあり、二人の間に衝突を作らないように意識して制作したと、短編映画をつくる上でそれぞれが心がけることについてもお話しいただきました。最後に、今回の特別マスタークラスにオンラインで参加した学生に向けて、監督お二人からメッセージをいただき、ドゥアール監督は「仕事を始めたときに、これまでの専攻と異なる仕事が回ってきても、どんなことでも挑戦してみること、映画制作はチームワークなので、協力関係ができていくことが大切」と人との出会いの大切さを伝えてくれました。プロフィ監督は「特にシナリオを書く人に対して、頭の中に何度も出てくるアイディアを大切にし、それを元に書くと良い」とアドバイスし、映画を観て一緒に語れる仲間をつくって意見交換をすることの大切さについても話してくれました。

特別マスタークラスのアーカイブ映像は2021年5月末まで配信。ドゥアール監督の『真西へ』、プロフィ監督の『アデュー』は12/13(金)までBSSOT特設サイトにて配信中です。ぜひマスタークラスの映像と合わせて作品もお楽しみください。